Insight Micro-Rotor calibre
キャリバー名:インサイト・マイクロローター
巻上げタイプ:自動巻き式
機能:時、分、スモールセコンド
サイズ:直径32.1mm、厚さ6.8mm
パワーリザーブ:80時間
石数:28石
部品数:206個
振動数:毎期28,800回
インサイトマイクロローターのムーブメントはスイス・ジュウ渓谷にあるローマン・ゴティエの工房で、設計から開発、製造、装飾、組み立て、そして調整までが行われています。ローマン・ゴティエは、この時計を鑑賞する人々がその壮観な構造と洗練された仕上げを瞬時に堪能することができるよう、インサイトマイクロローターのムーブメントの視認性をできる限り高めました。この作品が「インサイト(洞察力)」の名を冠する理由はそこにあります。
両方向回転式マイクロローター
両方向回転式のマイクロローターは、逆転歯車によって実現しています。この歯車の軸は、歯車の側方運動および回転を促進させるために、2枚のアーチ型スチール製プレート(ブラックポリッシュ加工)に入れられた曲線状の開口部に沿って左右にグライドします。これによってマイクロローターの回転方向が変わる際、逆転歯車の歯が逆に噛み合うよう働きかけられ、逆方向にもスライドするようになります。ローマン・ゴティエは、ルビー製ベアリングにそれぞれ取り付けられた2つのブリッジ(受け)の間を、マイクロローターが回転するよう設計しました。《金属対金属の接触を避けることは時計作りにおける原則》ということを鑑みて、金属対ルビーとなるように設計したのです。ルビーは摩擦係数が低く、耐摩耗性に優れています。雑音や摩耗をもたらす恐れのある金属製のボールベアリングではなく、ルビー製のボールベアリングを採用することにより滑らかかつ音を出さないマイクロローターの回転を実現しています。このマイクロローターの相対的重量を考慮した結果、下部にある1つのブリッジの支えしか無いフライングローターの採用を回避しました。その代わりとして、上部および下部の2つのブリッジ(受け)によりサンドイッチのように挟まれた、より安定性の高いマイクロローターを設計しました。
ツインバレル
ムーブメントの二つの香箱は、フルに巻き上げた状態で組み合わせると、合計80時間のエネルギーを確保します。2つの香箱は、直列配置されており、ローマン・ゴティエを象徴するカーブしたアームを持つテンワ、および目盛付きの偏心ウェイト、そして職人の手によって組み立てられた頑丈な三角形のアンクルから成る調速機構に一定のトルクをもたらします。
手作業によるムーブメントの仕上げ
インサイトマイクロローターのムーブメントに施された、目を見張るような装飾には、手作業による面取り、およびポリッシュ(磨き)、サンバースト仕上げ(放射状サテン仕上げ)、ヘアライン仕上げ(直線状サテン仕上げ)、サークラーグレイン装飾(円形装飾)を含みます。受け石用の穴に至るまで手作業による鏡面仕上げが施されています。
インサイトマイクロローター・スケルトン
インサイトマイクロローター・スケルトン
インサイトマイクロローター・スケルトンは自社製自動巻きキャリバーをスケルトン化し、高級時計の伝統を重んじた最新鋭のスケルトンウォッチを目指したものです。そのために、ただスケルトン化するだけでなく、ブリッジ(受け)とプレート(地板)の素材を超軽量チタンへと変更した上で、それぞれに《面取り》が施されています。面取りとはスイス時計産業の伝統的な部品の装飾技法の一つで、《角を切り落とし、面を整え、磨きあげる》ことを指します。このインサイトマイクロローター・スケルトンの制作過程においてムーブメントの面取りだけで250時間以上を費やします。インサイトマイクロローター・スケルトンはカスタムオーダーモデルです。各国の正規販売店において、お好きなケース素材、文字盤の色、面取り面の仕上げ技法などをお選びいただくことができます。
インサイトマイクロローターのスケルトン化
技術的観点と美的観点から、全てのムーブメントがスケルトン化できるわけではありません。ローマン・ゴティエは次のように述べています。「プレスティージHMやHMSをスケルトン化すると、大きなスペースが空いてしまうため肌が見えすぎてしまいます。逆にロジカル・ワンはスケルトン化できる部分がほとんどありません。その点、インサイトマイクロローターはスケルトン化に最も適していると言えます。」
インサイトマイクロローターは自動巻きの三針モデルであり、自社製ムーブメントには22Kゴールド製の両方向巻き上げのマイクロローターが搭載されています。2つのブリッジ(受け)の間を回転するマイクロローターは文字盤側、ケースバック側双方からご覧いただけます。摩擦を最小限にし、耐摩耗性に優れるルビーベアリングを使用しているため、その動きは滑らかであり音を立てません。また直列に配置された2つの香箱を効率よく巻き上げます。フルに巻き上げた状態で80時間のロングパワーリザーブを誇ります。ローマン・ゴティエは次のように表現します。「ブリッジ(受け)の形、テンプやマイクロローターの位置、香箱と歯車のレイアウトから、このムーブメントをスケルトン化することに新たな可能性を感じましたし、隠れていたディテールが見えることでさらなる感動をもたらすことができるのではないかと。」
超軽量チタンの採用
インサイトマイクロローター・スケルトンは、プレート(地板)と8個のブリッジ(受け)がスケルトン化されています。プレート(地板)とブリッジ(受け)はこれまで真鍮で作られていましたが、スケルトン化に必要な強度と軽さを確保するためにグレード5チタンを採用して、ムーブメントの重量は28gから16gになりました。またグレード5チタンはガルバニック処理をせずとも自然な色味を実現し、手作業で磨きを施すこともできます。ローマン・ゴティエは次のように述べています。「チタンを理想通りに加工するのは本当に難しいことです。一つ一つのパーツの完成には、既存の素材より多くの工程が必要ですし、機械や工具も容易に破損してしまいがちです。火事の危険もあるので夜中に無人で機械を動かすこともできません。そして何よりオペレーターの手腕が問われます。±2ミクロン(0.002mm)の範囲内で仕上げなければならないのですから。ほんの少し穴が小さいだけで、時計師が軸受けの石を置いた際にパーツが割れてしまうのです。」
手作業による仕上げの最高峰
チタンを加工することよりも、さらに大変なのが手作業による仕上げです。2005年のブランド誕生以来、高い評価を受ける「手作業による仕上げ」。その代表的なものが面取りです。面取りの美しさは、表面と側面の間の部分に面を作り、その面に磨きを施すことで生まれます。面取りは次のような4つの工程に分かれます。
①スチールのやすりで丸みを帯びた面取りを行う ②アルミナで面を整える ③エメリーペーパーを用いて仕上げる ④ジャンシャン(ジュウ渓谷に自生するリンドウの一種)の茎からできた棒とダイアモンドペーストを使用して磨く。
ブリッジ(受け)とプレート(地板)のスケルトン化は、高いスキルをもつ面取りのチームをもってしても、初めての取り組みばかりでした。まずスケルトン化に伴い、156もの角が生まれました。特に内側の角は手作業で使う道具が入りにくく、困難を極めました。そしてチタン特有の素材の問題もつきまといました。ローマン・ゴティエの面取りチームの責任者であるシルヴィー・デヴォ―は次のように述べています。「面取り職人としてのキャリアは17年になりますが、チタンをこれほどまでに用いたムーブメントに携わったのは初めてです。これまでは真鍮、スチール、金、洋銀などを扱ってきました。チタンはロジカル・ワンのコンスタントフォース機構の部分に用いていますが、この部分だけでも手作業での仕上げに約20時間費やします。インサイトマイクロローター・スケルトンは私自身や私のチームにとって、まさに未知への挑戦でした。チタンは、加工はもちろん手作業の仕上げも困難を極めます。真鍮に面取りを施すのに比べ、全ての工程において時間がかかります。時には同じ工程を繰り返さなければなりません。また、小さな粒子が素材に傷をつけ、スポットが残ってしまった時にはやり直さなければなりません。」
実際、ローマン・ゴティエの面取りのスペシャリストが、インサイトマイクロローター・スケルトンのナチュラルチタン製のプレート(地板)と8個のブリッジ(受け)の全て面取りを施すのに250時間以上かかります。この250時間は純粋に面取りにかかる時間です。他の手作業もしくは手動機械を用いるムーブメントの装飾は、さらに時間を要します。フロスティング、サークラーグレイン(円形装飾)、スネイル仕上げ(らせん状のヘアライン仕上げ)などを施すには、さらに100時間以上の時間がかかります。シルヴィー・デヴォ―は次のように続けます。「インサイトマイクロローター・スケルトンの製作には、精神面のスタミナが試されます。1ヶ月半にわたり1日8時間、全力で集中しなければなりません。マラソンのようなものです。ゴールにたどり着くまで、あらゆる部品の角という角に面取りを施さなければなりません。」
今回のインサイトマイクロローター・スケルトンにおいては、従来の面取りの仕上げの仕様に加え、面取り面のマット仕上げもお選びいただけます。このマット仕上げは主張をやや抑えた仕上げの方法で、面をスチールのやすりで削り、整え、エメリーペーパーで仕上げ、従来の最後の工程を敢えて行わずマットな質感を残す技法です。
スケルトンウォッチとなり、
新たに見えるディテールの世界
手作業によりスケルトン化されたブリッジ(受け)とプレート(地板)により、新たなディテールが現れました。
1時位置と3時位置の間には、巻き上げと時刻設定の機構が、S字のネジ頭を持つネジとともに見られます。5時位置にはスネイル仕上げ(らせん状のヘアライン仕上げ)が施された主ゼンマイが、そして7時位置にはサークラーグレイン(円形装飾)が施され美しく面取りされた円形のアームが見て取れます。6時位置で鼓動を刻むテンプはまるで浮かんでいるようであり、プレート(地板)を丸く刳り貫き特徴的な空間を用意した9時位置では、マイクロローターがスイングしています。
シースルーバックにより、ムーブメントをより良く鑑賞することができます。ここでもまた、マイクロローターが主役となり、この装置の両方向回転を可能にする逆転歯車から始まる輪列の動きにトルクを伝達しています。美しく装飾された主ゼンマイと歯車はスケルトン化に伴い、より見えるようになりました。ブリッジ(受け)が描く曲線は、それらに取り付けられた直線状のプレートと完璧なバランスを見せています。
「インサイトマイクロローターをスケルトン化することで、ディテールをより楽しんでいただけるようになったと思います。この時計を着用した人は、歯車をはじめとする動くパーツを見て、ムーブメントを一層堪能することができます。また、スケルトン化したことで時計にさらなる立体感が出ました。結果として、理想的なスケルトンウォッチができたと思っています。」と、ローマン・ゴティエ。
お客様と作り上げる時計
インサイトマイクロローター・スケルトンは、カスタムオーダーモデルです。お好きなケース素材、文字盤の色、そして面取り面の仕上げ技法などをお選びいただきます。これは、中世の西洋貴族文化における「顧客と時計師」の関係を模しており、お客様のご要望に応えるブランドとしての取り組みの一環です。そのカスタムオーダーの例として、ケースは18Kレッドゴールド、18Kホワイトゴールド、プラチナ、ナチュラルチタン、ブラックチタンよりお選びいただけます。
写真のモデルは18Kレッドゴールドケースです。グランフーエナメルの文字盤は手作業のフロスティングによりマット仕上げが施され、針は18Kレッドゴールド、インデックスは白色と金色を採用しています。ムーブメントのブリッジ(受け)とプレート(地板)は面取り面にマット仕上げが施され、マイクロローター、ロゴのプレート、そしてテンプは金色で統一されています。ストラップはグレーのナチュラルラバーストラップと18Kレッドゴールドピンバックルです。カスタムオーダーでカスタマイズできるのはケース、文字盤、ムーブメント、ストラップ、バックルと多岐に渡ります。
Prestige HM/HMS calibre ›
2007年のバーゼルワールドで発表されたローマン・ゴティエのデビュー作。シースルーバックからは手作業による最上級の仕上げを眺めることができます。